あれこれブログ
2018.07.23.
救急医学会も緊急提言
皆さん、こんにちは^^
いやぁ~暑いです。
大阪でも10日連続の猛暑日。
埼玉県熊谷市では41.1℃の日本最高記録更新。
東京では22日の救急出動件数は3125件で、1日あたりの件数としては救急業務を始めた1936年以降で最多。
さらに、熱中症の疑いで今年搬送された人も22日までに計3544人となり、今の時点で昨年1年間の計3454人を超えたのです。
そんな中、救急医学会も緊急提言を発表しました。
特に子どもや高齢者は熱中症になりやすいとし、水分をこまめに取ることや涼しい場所への誘導、周囲が互いに注意し合うことなどを提言しています。横田裕行代表理事は「熱中症は怖いが、注意すれば防げる」と対策の徹底を求めています。
同学会の熱中症に関する委員会の清水敬樹委員長によると、勤務する東京都立多摩総合医療センターの救命救急センターでは今年は熱中症による救急搬送患者が多く、特に重症者が多いといいます。清水さんは「今年の熱波は未体験ゾーン。危機的状況にある」と語っています。
提言は、子どもは汗腺の発達や自律神経が未熟で体温調節機能が弱いと指摘。親や学校の教諭、部活動の監督などが見守り「いつもと様子が違う」と感じたら迅速に対応するよう求めています。集団生活の際は、最も弱った子どもを基準にすることが大事としています。
当クリニックでも熱中症と思われる方が、お越しになられます。
水分と塩分をしっかりと摂って、涼しいところで休んでください。
塩分はポカリやアクエリアスではなく、梅干し、塩昆布、味噌汁で。
なお、提言は同学会のホームページ(http://www.jaam.jp/index.htm)で公開しているので参考にしてくださいね。
2018.07.17.
杭全祭り無事終了
皆さん、こんにちは^^
7月11日から14日に行われた杭全祭りが無事に終了しました。
野堂東組さんの救護班として参加させていただきましたが、今年は熱中症の方も怪我の方もなく本当に良かったと思います。
(熱中症になりかけの方はいましたが、クリニックで治療するほどではなかったです)
また、13日には接待もさせていただきました。
地車囃子を披露していただき、老健入所者の皆さんだけでなく、デイサービスへの通所者さんも楽しんでおられました。
本当にありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
2018.07.02.
熱中症は予防できる(再掲)
皆さん、こんにちは^^
関東では6月に梅雨明け、大阪でも枚方や八尾では猛暑日を記録。
先週末、地車も試験引きも何とか熱中症で倒れる人は出ませんでしたが、なりかけの方は何人かおられました。
東組総会でも話をさせていただきましたが、再度認識してほしいので、再掲します。
熱中症では、頭痛やだるさ、吐き気といった症状がでます。そして、体に熱がこもって体温が上がります。すると熱や脱水が原因で、血液中に炎症物質が増えてしまいます。この炎症物質が頭痛の原因です。熱と脱水が頭痛の原因なので、ロキソニンやバファリンのような頭痛薬を飲むだけでは、効果は十分に得られません。体を冷やして水分補給をすることが一番の治療になります。
また、「日曜日に炎天下でスポーツをした。その後からぐったりとしてしまい病院へ。熱中症と言われて点滴をしたけれど、水曜日になってもまだ頭痛が続いていて…。頭以外は大丈夫なんですが…」
これは熱中症としては、典型的なパターンです。熱中症は、よく食べよく寝て、一晩たてばすっきり治るという病気ではありません。水分補給を正しくしても、体内のバランスが整い切るまでには数日間のズレがあります。それが原因で、治療をしてから何日も頭痛やだるさが続いてしまうのです。この症状が続いている最中は、体が特に熱中症に弱い状態です。辛い間に無理をして、2回目の熱中症にならないようぜひ注意してください。
さて、熱中症では、具合の悪さを3段階に分けて表現することになっています。
1度:めまい、立ちくらみ、吐き気、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)
2度:頭痛、嘔吐、だるさ、脱力感、集中力や判断力の低下
3度:意識や反応が低下する、全身がけいれんする
1度が軽症、3度が重症です。このうち、1度はその場で対処可能ですが、2度以上は医療機関の受診が必要となります。頭痛は2度の熱中症の目安になるので、頭痛が目立つときは無理をせず病院に行ってください。
次に、軽い熱中症(1度の熱中症)に対する応急処置としては、以下点にまず気をつけます。
○直射日光を避ける
○風通しの良い場所、または、冷房の効いた室内へ移動する
○太い血管がある場所(首、脇の下、足の付け根)を冷やす
○休んだ後に、水分と塩分を十分にとる
体を冷やすときは血管の近くを冷やすと、体の表面だけでなく体全体を効率良く冷やすことができます。また、クーラーだけでなく扇風機も有効です。冷たい風を送るだけでなく、体の表面の汗が蒸発する際に体の熱も一緒に逃がしてくれるためです。
前述しましたが、熱中症の原因は、大きく3つあります。
1.体温の上昇
2.脱水
3.ミネラル(特に塩分)の不足
しかし「水と塩をこまめに!」と言われても、量が分かりにくいですよね。量の目安を説明します。
まず水分です。暑い日に運動していたら、ペットボトル1本や2本では全く足りません。中高生が炎天下で1日部活動をするようなときには、4~5リットルと必要な場合もあります。頭痛がするほどなら水不足の可能性が大きいです。
水分が不足しているサインは2つあります。
1.尿が出ない
2.脈が早い
たとえば半日のスポーツや作業あたり、一度も尿が出ないというのは、水分が不足している証拠です。十分に水分摂取ができている場合には、2~4時間に1回は尿が出ます。尿の回数が少なければ、増えるまで水分を補給してください。
脈拍も大事です。普段なかなか脈拍を測る習慣はないとおもいますが、「熱中症かな?」と思ったら、運動をやめて休んだあとの脈拍を測ってみてください。1分間測って、おおまかな目安は次のようになります。
○50-90回:正常範囲内です。それでもだるさや吐き気がある場合は熱中症の可能性があります
○90回:脱水気味で、熱中症が疑われます
○100回以上:本格的な脱水です。
水分についてまとめると、
○運動量によって飲むべき量は変わる
○炎天下で運動していたら、500ml のペットボトル1本や2本では足りない
○どれだけ飲むべきかは、「尿が2~4時間に1回出る程度」または、「脈拍が1分間に90回未満になる程度」が目安と言えます。
また、熱中症で忘れられがちなのが塩分です。水分摂取に気をつける方は多いのですが、汗の中には水だけでなく塩分も含まれています。熱中症で足がつったり、頭がぼーっとしたりする場合には、塩分が足りないという可能性に注意が必要です。
「塩分が大事だから、お茶じゃなくてスポーツドリンクを飲もう」
そう思う方もいるかもしれません。しかし、スポーツドリンクに含まれている塩分は微々たるもので、スポーツドリンクだけで熱中症を防ぐことはできません。スポーツドリンク(500ml)を1本飲むよりも、コンビニのおにぎりを一つ食べる方が効果的です。味噌汁やおかずであれば、もっと多くの塩分が含まれています。塩分を摂るならば、水分よりも食事が大切です。含まれている塩分量が大きく違うためです。
さて、最後に、塩分の目安を確認してみましょう。
1リットルの汗をかくごとに、塩分はおよそ1グラム失われます。
炎天下で、3リットルの汗をかいた場合
○ポカリスエットなら2リットル
○アクエリアスなら3リットル
○塩飴なら15個
○味噌汁なら2杯
○梅干しなら1個半
この量で、ちょうど失った塩分(3グラム分)が補給できる計算になります。朝に味噌汁を1~2杯飲むだけで、効率良い塩分補給になることが分かります。
熱中症は予防できる病気です。
「水と塩をとる」ことは知っていても、どのくらいとったらいいかはよく知られていません。また、どんなに完璧なスケジュールで食事・水分を摂っても、休憩なしで炎天下で運動していたら、やはり熱中症になってしまいます。
最後にまとめです。
○熱中症の頭痛は要注意。頭痛薬ではなく水分・塩分補給が一番の治療
○水分摂取は「尿が2~4時間に1回出る程度」または、「脈拍が1分間に90回未満になる程度」が目安
○塩分摂取はドリンクよりも食事。運動前後ではしっかり食事を摂る
○運動中は2時間に1回(以上)を目安に休憩をする
これらを心がけるだけで、熱中症の発症率は下がります。頭痛がして「熱中症かな?」と感じた方は、まず部屋を涼しくして、水分と塩分を補給してみてください。暑さのピークの季節が過ぎるまでは、「スポーツドリンクを飲んでおけばなんとかなる」というのではなく、ぜひ上記の目安を意識してみてください。
2018.06.21.
虫刺されにご用心
皆さん、こんにちは^^
関西は梅雨の合間の晴れ間です。
昨日は大地震の後の激しい雨で心配していましたが、2次災害はなかったようですね。
さて、今回は暑い日も増えてきたので、虫刺されの話題です。
気温の上がる季節を迎えると、気になるのが虫刺されです。注意が必要なのは、蚊だけではありません。重症化することもあり、正しい情報と予防法を知ることが大切です。
蚊やブユは人の肌に止まり、血を吸う時に血液が固まるのを防ぐ唾液腺物質を注入します。人の体がこの物質を異物として認識し、アレルギー反応が起きるのに伴い、刺された部位がかゆくなったり赤くなったりします。
ハチは腹部の毒針から毒液を注入します。毒液には、痛みやアレルギーの原因となる物質が含まれています。
ドクガの幼虫が持つ毒針毛が皮膚に触れて刺さると、ひどいブツブツができます。
蚊のアレルギー反応には、「即時型」と「遅延型」があります。即時型は刺された直後~15分でかゆみが出て、1~2時間で治まります。個人差はありますが、大人に多くみられます。遅延型は刺されてから、1~2日後にかゆくなったり炎症が起きたりします。激しいかゆみが続くこともあり、子供に多くみられます。青年の頃は、両方の型がみられることが多く、直後のかゆみが治まった翌日から再び症状が出たりします。高齢になると、反応が出ない人もいます。まれに1日以内に38度以上の高熱が出て、皮膚に潰瘍ができることもあります。「 蚊刺過敏症 」という症状で、EBウイルスが原因とされています。
ブユに刺された場合は、多くは遅延型です。
ハチは初めて刺された場合、痛みは1~2時間で治まりますが、2回目以降は呼吸困難や意識消失などが出て、激しいアレルギー症状で死に至ることもあるので、注意が必要です。
市販の塗り薬の主な成分は2種類です。抗ヒスタミン剤は、かゆみを抑える一方、炎症を抑える効果は少ないです。一方、ステロイド剤は、効果が高く、かゆみとともに皮膚の炎症も抑えてくれます。軽い症状は市販薬で改善しますが、炎症がひどい場合は病院を受診しましょう。
ハチやブユに刺された場合は、毒を器具などで吸い出して患部を冷やし、激しいアレルギー症状が出た場合は救急車を呼びます。
ドクガに触れた時は粘着テープを貼って、毒針毛を取り除きます。
マダニは無理に除去すると体の一部が残るので、ピンセットで慎重に取り除くほか、病院で局所麻酔をして皮膚ごと切り取ることもあります。
予防するには、当たり前ですが、草むらや野山で肌の露出を避ける服装を心がけましょう。ハチは黒いものを攻撃するので注意が必要です。
また、虫刺されを防ぐため、「ディート」や「イカリジン」といった成分が配合された虫よけ剤が販売されています。国内では2014年にデング熱が感染拡大したことなどから、国が濃度を高めた製品の販売を認め、効果が長持ちするものも登場しました。ただし、ディートには生後6か月未満の乳児には使用しないなどの制限があるので注意が必要です。
2018.06.18.
震度4
皆さん、こんにちは^^
関西では大変な週明けになりました。
大阪北部地震で、平野区でも震度4。震源地に近いところでは震度6弱。
阪神淡路大震災の時には私は関西にいなかったので、こんな揺れを経験したのは初めてでした。
マンション内にいたので、大丈夫なのはわかっていましたが、それでも怖かったですね。
そして、続々と被害についての情報が。
3名死亡、300人以上が負傷。
大阪府内の公立校と幼稚園1000校以上が休校。
約17万戸が停電、約11万戸でガス供給停止。
163件のエレベーターの閉じ込め発生。
JRや私鉄もほとんど運転見合わせ。
水道管の破裂や断水、火災も発生。
百貨店やイオンでも営業見合わせ。
震災など縁がないと思っていましたが、いつ遭遇してもおかしくないのだと実感しました。
2018.06.11.
?の会話
皆さん、こんにちは^^
台風5号の影響で、かなりの大雨を覚悟していましたが、大阪はさそどでもありませんでした。
災害等もなく良かったのですが、蒸し暑い!
さて、今回は、ちょっとクスッとできる?の話をお届けします。
労作時呼吸困難で来院された患者さんとの会話。
私 「今日はどうされましたか?」
患者 「前医で肺気腫と診断されて吸入しているのですが、全然よくならないのです。」
私 「どんな吸入を使われているのですか?」
患者 「スピルバーグを吸っています。」
私 「・・・」(おいおい、スピルバーグって映画監督だよね。ET?ジェラシックパーク?ジョーズ?インディージョーンズ?どれもありえないでしょ。。。)
私 「1日何回吸入されていましたか?」
患者 「1日1回で2吸入です。」
私 「それって、スピリーバではないですか?」
患者 「あっそうそう。たしかそんな名前でした。」
私 「そうでしょうね。。。」(似てるか?スピルバーグと。。。)
ディーン・フジオカが好きな女子の会話
患者 「昨日見た?デーン・フジオカのやつ。」
看護師 「あーあのモンテルカストね。見た見た。」
私 (おいおい、モンテルカスト(シングレアの一般名)は薬だろーよ。モンテ・クリスト伯だろ。)
患者 「そうそう、モンテ何とか。ストーリーがぞくぞくするのよね。」
看護師 「そうでしょ!私もモンテルカスト大好きなの。」
私 (おいおい、大好きなんだったら間違えるなよ!ここで指摘すべきなのか?モンテ・クリスト伯だよって。)
と、こんな事を考えながら診察をしている毎日なのでした。
2018.06.07.
野菜の摂り方
皆さん、こんにちは^^
ついに関西も梅雨になりました。本日は梅雨の中休みでしょうか。
でも、この週末は再び激しい雨のようなので、気を付けましょう。
さて、以前に野菜ジュースは野菜の代わりにならないと書いたところ、コメントをいただきました。
そこで、今回は簡単で効率の良い野菜の摂り方を紹介します。
野菜の摂取量は日々不足しています。『健康日本21』でも1日の野菜の摂取目標量を350gと定めていますが、実際に摂取できている方は少ないのが現実です。『平成28年 国民健康・栄養調査』の結果では、「野菜摂取量の平均値は 276.5g(男性:283.7g、女性:270.5g)であり、この10年間で有意に減少している」と報告されています。
最近では、「ベジファースト」という言葉が皆さんの間にも浸透してきています。これは言葉通り、「食事の最初に野菜を食べる」ということです。これによって以下の3つが期待できるのです。
(1)ビタミンやミネラルなどの栄養素の補給
緑黄色野菜に含まれる抗酸化ビタミンであるβ-カロテン(ビタミンA)やビタミンE、ビタミンCをはじめ、ナトリウムの排泄作用があるカリウム、ミネラルが摂取できます。
(2)血糖値の上昇緩和と脂質の吸収阻害
食物繊維は、水溶性と不溶性の2種類があり、水溶性食物繊維の摂取は糖の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇の抑制や脂質の吸収阻害に効果的です。また、不溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を増やす働きに効果が期待できます。
(3)料理のカサや噛みごたえが増加
低カロリーである野菜は、カロリーや脂質などを気にせず、料理のボリュームや噛みごたえを増やすことができます。これにより食べ過ぎを予防する働きがあります。
しかし、皆さんに「野菜を食べましょう」と伝えた場合、実行するハードルが高いと感じる方が多くいます。原因としては、①野菜を切るのが面倒くさい、切れない、②外食で野菜(サラダ)を頼むと食費がかさむ、②野菜が苦手、が挙げられますが、今回は、①や②のハードルを下げるコツを紹介します。
まず、プチトマトやキュウリなどの野菜は、洗ったらそのまま食べることができる「そのまま野菜」です。コンビニやスーパーでも手軽に手に入り、価格も安定しているため、こうした野菜を冷蔵庫にストックしておくことや、外出先で購入することをお勧めします。
さらに、カット野菜を利用しましょう。カット野菜は「栄養価がないのでは?」と懸念される方もいますが、各社のデータによるとビタミンやミネラルの残存率も比較的高いと報告されています。何より、食物繊維は残っているので、「『繊維』を食べる」、「ボリュームを増やす」と考えると食べるメリットが出てくると思います。また、価格が安定しているため、購入しやすいのも特徴です。即席ラーメンなどに入れる際は、袋を開けて電子レンジで1分ほど加熱することで、ボリュームが抑えられ、たっぷりと入れることができます。
また、カット野菜にドレッシングをかけ、そのまま食べるのも良いと思いますが、せっかくなので、栄養補給を考慮し、ナッツやサラダチキン、ゆで卵などを投入してみましょう。たんぱく質やビタミンなどが補給できる即席サラダが作れます。さらに、オリーブオイルを加えることで、余計な塩分を抑えることも可能です。
こうした野菜の食べ方は、栄養バランスが全て整うとは言い切れませんが、野菜を食べる習慣を促す第一歩になります。
是非、始めてみてくださいね!
2018.06.05.
夢の特効薬
皆さん、こんにちは^^
関西もいよいよ梅雨入りとなりそうですね。ムシムシ感、満載です。
さて、本日は夢の特効薬が出来るかものお話です。
英国の研究グループが、風邪に効く候補物質を開発したと発表しました。ヒトの細胞を用いた実験で、この物質によって風邪の原因となるライノウイルスの複製を阻害し、ウイルスがヒトの細胞を支配するのを防ぐことに成功したということです。
研究を率いた英インペリアル・カレッジ・ロンドンのEd Tate氏は、「風邪は多くの人にとってただ不都合なだけのものだが、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの疾患のある人にとっては重篤な合併症を引き起こすこともある」と述べ、「このような薬剤は、感染初期に投与すれば極めて有益であると考えられ、われわれは薬剤がすばやく肺に到達するように吸入剤の開発に取り組んでいる」と付け加えています。
風邪を引き起こすウイルスには何百種類もの変異株が存在し、急速に進化して薬剤への耐性を獲得するため、その全てに対して完全な免疫を得ることやワクチンを接種することはほぼ不可能なのです。そのため現在、風邪に効く特効薬はありません。もし特効薬を開発したらノーベル賞ものとも言われています。
そこで代わりに、鼻づまり、喉の痛み、発熱などの症状の緩和に重点を置いた対症療法が行われているのです。
ちょっと難しい話ですが、風邪の原因となるウイルスは全てN-ミリストイルトランスフェラーゼと呼ばれるヒト細胞内の酵素に頼って自らを複製しているのです。ウイルスはこの酵素を利用して脂質修飾(N-ミリストイル化)されたタンパク質を乗っ取り、DNAを保護する外殻を形成します。今回開発された物質(IMP-1088)はこのN-ミリストイル化を阻害してウイルスの複製を防止するもので、「抵抗不可能な」風邪の治療薬として有望なものであると研究グループは考えているのです。
以前には、ヒトの細胞に作用するように作られた物質で毒性が認められたものもありますが、研究者らによればIMP-1088はヒトの細胞に対して安全であると考えられるというこのです。ただし、この結果を裏付けるにはさらに研究を重ねる必要があるとTate氏は述べており、「この薬剤の作用機序から、有害な副作用の危険性を最小限に抑えるには、原因が異なる類縁疾患ではなく、確実に風邪のウイルスに対してこの薬を使用する必要がある」と指摘しています。研究グループは動物実験の後にヒトを対象とする試験に進む予定ですが、動物で認められた結果は必ずしもヒトで再現できない場合もあるのです。
果たして、ノーベル賞に値する風邪の特効薬は出来るのでしょうか?
楽しみです。
2018.05.29.
五月病
皆さん、こんにちは^^
いよいよ梅雨の時期が近づいてきましたね。蒸し暑いです。
もうすぐ6月ですが、今回は五月病のお話です。
日本人にとって、春は別れと出会いの季節。誰しも、何かしら環境の変化を経験することが多いのです。学生は卒業、入学、進級、クラス替え、新しい友達、新しい先生。社会人は異動・転勤、入社、新しい同僚・上司あるいは部下に新しい仕事。家庭の主婦も、ご主人の転勤などに伴う引っ越しや子供の進級・進学、新しいご近所さんに新しい保護者。慌ただしく3月、4月が過ぎ、5月になって新しい環境にもなじんできたと感じるころ、連休あたりから心身の不調を感じる人が増えてきます。いわゆる「五月病」です。
「五月病」は、ご存じのとおり正式な病名ではありません。新しい環境や秩序への適応が困難になることによって起こるさまざまな症状を総称したもので、5月に特徴的に現れやすいことからこのように呼ばれています。「五月病」の歴史は、実は古く、今から50年前の1968年に初めて報告され、この年の流行語にもなったそうです。もともとは、主に大学の新入生が、5月の連休明けごろに一過性に虚脱感、無気力、抑うつ感などを呈する状態を指す言葉でした。
その後、「五月病」という言葉が一般に広まっていくと、むしろ大学生に対して使われることは少なくなり、新入社員、異動など職場環境の変化にさらされたサラリーマン、さらには子供まで、幅広く用いられるようになりました。新入社員の場合は、3ヵ月程度研修があるため、6月ごろに調子が悪くなり、不安や抑うつが顕在化することが多いといわれ、「六月病」とも呼ばれることもあります。
社会人1年目にメンタルの調子が悪くなるのは、サラリーマンに限ったことではありません。医師にとっても、初期研修の時期が最も強いストレスを感じている時期とされています。では、どのくらいの研修医が抑うつ状態となっているのでしょうか。
全国の臨床研修病院250施設において、2011年度採用の研修医1,753名を対象にアンケート調査が行われています。このうち4月のオリエンテーション時と研修開始3ヵ月後の6月末の2回のアンケートに両方とも回答があり、抑うつ状態を評価する項目に欠損のない1,238名を対象とした解析において、研修開始3ヵ月後に新たに抑うつ状態を呈した研修医の割合は19.6%でした。臨床研修制度が導入された2004年度調査時の25.2%に比べると有意に減少しているものの、依然として約5人に1人が抑うつ状態を発症していました。研修開始前から抑うつ状態にあった研修医を含めると、研修開始3ヵ月後の抑うつ状態率は30.5%となりました。
5~6月に抑うつ状態になってしまった場合、周囲との人間関係ができ、適応に時間をかけるうちに、自然と改善していくことが多いとされています。しかし、抑うつ気分、興味や喜びの喪失が1ヵ月以上続くようであれば、積極的にうつ病を疑い対応することが望まれます。
2018.05.22.
野菜ジュース
皆さん、こんにちは^^
今日の大阪は予想気温29℃でした。
昼間にちょっと買い物に歩いて出たのですが、すでに汗ダラダラです。
暑いのは好きなのですが、汗かきにとってはつらい季節でもあります。
さて、今日の話題は皆さんも飲まれている野菜ジュースについてのお話です。
皆さん、市販の「野菜ジュース」はお好きですか?
市販のものには、トマトジュースのように単品野菜で作られたものや、複数の野菜で作られた100%のもの、それに野菜汁と果物果汁がそれぞれ50%ずつのものなど、さまざまな種類があります。
「なかなか野菜を取れないので、代わりに野菜ジュースをよく飲んでいます。それでよいでしょうか?」
よくこんな質問をされます。栄養を取り入れるためにおなかに穴をあける「胃ろう」から野菜ジュースを注入している人もいます。野菜不足を気にして、野菜ジュースを飲んでいる医療関係者もよく見かけます。
結論から言うと、野菜ジュースは「野菜の代わり」にはなりません。その理由を、簡単に解説していきます。
一日の野菜の摂取量の目安が350gとされているのは、皆さんご存じの通りです。野菜350gは、「量」だけでなくその「質」が大切です。レタスを350g食べたとしても栄養的に十分ではありません。ニンジン、ホウレンソウ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜と、キャベツ、レタス、タマネギなどの淡色野菜を約半量ずつ、これに食物繊維の豊富な根菜、海藻、キノコ類をプラスすれば、ビタミンやミネラル類、食物繊維などを満遍なく取れます。
この「野菜350g」を、すべてミキサーにかけてスムージーにすれば、「野菜そのもの」ですが、市販のジュースの中には「野菜350gに含まれる栄養素量」に見合うように、乳酸カルシウムや塩化マグネシウムなどを添加して栄養素を補っているものがあります。ですから、これらのジュースは「野菜の代わり」ではなく、「野菜汁入りサプリメントドリンク」なのです。
もう一つ市販の野菜ジュースの栄養成分表示を見て気になるのは、栄養素の含有量の幅がかなり広いことです。ある野菜ジュースは、1本あたりのビタミンCが60~134mgとなっています。もしこれが最少量の60mgであった場合、「野菜の代わり」にするにはやや少ないのです。
また、野菜には旬があります。夏のホウレンソウと冬のホウレンソウでは、ビタミンCの含有量が違います。ゆでたもの100gあたりで計算すると、夏のものは10mgですが,冬のものは30mgにもなります。このように季節によって栄養素の含有量が変わるため、ジュースの栄養成分を一定に保つことは不可能です。
大半の定番野菜は、最近は1年中販売されていますが、旬のものはやはり栄養価も高く、たくさん出回るために価格も安くなります。私たちは、それらの中から、「今一番おいしくて、栄養価があって、安い野菜」を350g選べばよいのです。
最近、野菜の値段もやや落ち着いてきましたが、とにかく旬の野菜を中心に摂っていれば、「野菜350g」のハードルはグッと下がりますからね。