あれこれブログ

2019.10.31

最凶最悪の誤嚥論文

皆さん、こんにちは^^
本日で10月も終わり、明日から11月ですよ。
なんと、今年もあと2か月となりました。早いですね~。
さて、今回は最凶最悪の誤嚥論文についてお届けします。
お食事中の方は、読むの避けていただいた方がいいかもです。

さて、この論文を紹介するにあたり、虫が嫌いな人はご注意を! 満を持して登場する、私が数多く見てきた中で、最凶最悪の誤嚥論文です。心して読んで下さい。

発作性心房細動の既往歴がある42歳男性がゴキブリを吸い込んだ! ということで救急部を受診しました。ゴキブリを吸い込んでしまった後、胸部の圧迫感、息切れ、そして肺の中を虫が動き回る感覚を訴えたそうです。いや、吸い込むってどういうことだよ、と突っ込みたくなるのですが、想像もしたくない!

バイタルサイン(血圧、脈拍、体温など)はおおむね問題なかったのですが、左側の呼吸音が減弱し、喘鳴を聴取しました。ゴキブリの喘鳴?しかし、胸部レントゲン写真では特段異常はみられませんでした。
この時点では、「うーん、ゴキブリを吸い込んだ? まさか患者さんの狂言じゃないだろうな…」と主治医も思っていたかもしれません。

念のためと気管支鏡検査を行ったところ、なんと、なんと、まずちぎれたゴキブリの下半分(腹部以下)が舌区(左肺の中葉に当たる部位)に深く入りこんでおり、その他のゴキブリの破片も気管内に散在していました。疑ってスイマセン、本当でしたね。

論文には、絶対に見てはいけない「endobronchial cockroach(気管支内ゴキブリ)」の写真が掲載されています。(見たい人はどうぞ。PubMedでフリーで読めます。)

処置の途中、急激に酸素飽和度が低下しました。ゴキブリによるアレルゲン曝露なのか、喉頭痙攣か、とにかく処置が継続できませんでした。いったん中断し、酸素化改善を待つしかありませんでした。その後、残りのゴキブリは咳嗽とともに喀出されたものもあったそうです。状態が落ち着いてきたので、念のため全身麻酔下でもう一度気管支鏡で摘出し、晴れて気管支からゴキブリは消え去っていました。
その後、患者さんは発熱し、血培から菌が検出されました。踏んだり蹴ったり。泣きっ面に蜂。ゴキブリの持っていた腐敗菌だったのかどうかはわかりませんが、しかるべき抗菌薬によって治療されましたとさ。

世の中、信じられないような本当のお話があるものですね。

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