風邪の後の長引く咳、痰の絡まない咳、夜間の咳、
『咳喘息』ではありませんか?
◆ 鼻水、発熱、咽頭痛などの風邪症状は治ったのに、咳だけが続く。
◆ 市販の風邪薬や咳止めを飲んでいるのに、一向に咳が止まらない。
◆ 夜間から明け方にかけて咳き込みが激しくて眠れない。
こんな症状で困られていませんか?上記のような咳が続く方は「咳喘息」かも知れません。「咳喘息」はあまり知られていない病気ですが、近年確実に増加している病気です。
○ 咳喘息の症状について
咳喘息は、慢性的に咳だけが続く気管支の病気です。気管支喘息(一般的な喘息)のようなゼイゼイ、ヒューヒューといった喘鳴(ぜいめい)や呼吸困難はありませんが、気管支喘息と同じように気道が狭くなり、様々な刺激に対して過敏になることによって、炎症や咳の発作が起こるのです。
原因は、室内外の温度差やタバコによる受動喫煙、運動、ちょっとした会話や電話応答、飲酒等様々ですが、基本的にはアレルギー素因(アトピーや小児喘息などの既往や家族歴がある、ダニ・カビ・ハウスダスト・各種の花粉に対するアレルギーがあるなど)のある人に多いと言われています。私的には、「PM2.5」が騒がれ出してから患者さまが増えた気がしています。
風邪やインフルエンザに併発して発症することが多く、2~3週間以上、痰の絡まない、夜間から早朝に多い咳が続くようであれば、この病気の可能性が十分に考えられます。女性に多い傾向があり、しばしば再発を繰り返します。
○ 咳喘息の診断について
咳喘息の診断には、問診が非常に大切です。咳が出るようになったきっかけや時期、咳や痰の状態、起こりやすい時間帯などは当たり前のことですが、アレルギーに関する既往歴や家族歴も重要な診断材料です。
一応、咳喘息の診断基準は以下の7項目になります。
1.喘鳴を伴わない咳が8週間以上続く
2.喘鳴や呼吸困難などを伴う喘息にかかったことがない
3.8週間以内に上気道炎(風邪など)にかかっていない
4.気道が過敏になっている
5.気管支拡張剤が有効な場合
6.咳を引き起こすアレルギー物質などに反応して咳が出る
7.胸部レントゲンで異常が見つからない
「一応」と書かして頂いたのは、1や3のように8週間も咳を放置しておく患者さまはいらっしゃらないからです。早い方では1週間の咳で来院される方もおられます。また、2に関しては、小児喘息にかかっていたが完治した成人の方も沢山いらっしゃるからです。さらに,4や6も即座に調べようがありません。
ですから、咳喘息の診断は非常に難しいのです。当クリニックでは、聴診で肺雑音が聞き取れなくても、7の胸部レントゲンは確認するようにしています。また、5の確認のために、最初の投薬は7日分としています。結局は、最初に書いてある問診が非常に重要な診断材料となるのです。
○ 咳喘息の治療について
市販薬や処方薬のかぜ薬や抗生物質、咳止めなどを用いても、咳喘息の場合はほとんど効果がありません。
基本的には、症状の所で書いた①気道が狭まって、②刺激に過敏になって、③炎症を起こしている状態を改善する治療が必要です。従って、①に対しては気管支拡張薬、②に対してはロイコトリエン受容体拮抗薬(抗アレルギー薬)、③に対しては吸入ステロイド薬を使います。吸入ステロイド薬は、少量でも気道に直接作用して、優れた抗炎症作用を発揮します。全身的な副作用も非常に少なく、安心して長期間使用することが出来ます。
治療を開始して1~2週間で咳は劇的に改善するはずです。(改善しない場合は、他の原因を考える必要があります。)症状が良くなったからといって、治療を中断すると再発することがあるので、数ヶ月間は根気よく治療を続ける必要があります。ただし、その間に症状の改善と共に、薬の種類や量は減らしていき、最低必要量を見つけることが大切です。
咳喘息の患者さまの約30%が気管支喘息に移行するといわれています。気管支喘息への移行を食い止めるためにもできるだけ早い段階で薬を使って、気道の炎症を抑える必要があります。特に吸入ステロイド薬の使用は「咳症状の治療」とともに「喘息への移行を予防する」効果が期待できます。
※写真の製薬名は、各製薬メーカーの登録商標です。
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咳喘息や気管支喘息に関する過去のブログの一覧です。各ブログの詳細は、各タイトルをクリックしてご覧ください。
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